ITコンサルティングの要シミュレーション

ITのコンサルティングを行うには、いくつかの大事なキーワードがたびたび散見します。

”シミュレーション”
”可視化”、
”スモールスタート”
”ツインデジタル”
”AI”

どれもよくIT業界では口にされることの多いキーワードかと思いますが、一言で抽象化すると、

”将来を予測する”

ことだと言えるのではないでしょうか?

企業がITコンサルティングを求めるとき、多くは将来のことを危惧してのことだからです。

古代の日本には卑弥呼が日本を統治したとき、いわゆるシャーマン的な役割で将来のことを予見することで、人々を不安から開放し、信頼を得ることで権力を得て政治を支配したと想像できます。

そう考えると日本においては卑弥呼がコンサルティングの草分け的存在だったと言えるかもしれません。

今の我々の世の中では、もちろんこのような方法でのコンサルティングは眉唾もので誰も信用しないので、別の方法で将来を予見する必要があります。その代表的な方法がシミュレーションです。データを駆使すれば、ある程度の精度で予見ができます。

私はかつてManaged Print Serviceのコンサルティングをしていたことがあります。特殊なツールを使ったりして1ヶ月の印刷量を算出し、その後、我々が提供する複合機と関連するサービスを提供した場合の1ヶ月のコストと比較していただいて、いかにコストを削減できるかを証明したものです。

そしてそのコストが30%も削減できるという数字でも出ようならば、ほとんどのお客様は首を縦に振ったものでした。(あとは競合他社にいかに勝つかだけでした)

このように、データに基づく説得力のあるシミュレーションができるかどうかが、コンサルティングの要になるものと思います。

世の中には売り上げ増加を図る攻撃的なITシステムもあれば、いかに販管費を節約するかという守備的なITシステムもあります。

いずれの方法にしても、データを収集し、将来の数値を仮定して、効果を算出するというステップを踏んで初めて効果が可視化できます。また、たとえ表面上は導入は成功しているように思えても、いざ数字で比べてみたら、期待したほどの効果はでていなかったりします。ですので、試用とかスモールスタートの導入での緻密で正確なデータ収集と、検証がなによりも大事になってきます。そしてROIが十分でない場合、どれほど待望していたシステムでも導入すべきではありません。

データを収集して検証するプロセスにおいて、落とし穴がいくつかあります。
一つ目は、比較するデータをいかに正確に収集するかです。導入前のデータは、システムがない以上すべてマニュアルでの作業となります。導入後のデータも、データはあるがそれを収集して整理する作業がとても煩雑なものになったりします。導入する担当者やプロジェクトチームも、本来の仕事の合間では、そうそう時間を割くことができないため、大企業でない限り、このようなアプローチは敷居が高いものになってしまいます。

二つ目は、ユーザーの使用方法次第の要素です。導入さえすればほぼ確実に成果が出る数字はわずかで、あとはユーザー側の努力次第でさらに成果が出る場合、そのユーザーの意識改革も必要です。例えば印刷コストの場合、1ページあたりの単価やメンテナンスにかかる費用という要素をみると、成果かでるかどうかは一目瞭然なのですが、印刷量を減らすという要素をみる場合、それはユーザーの使用方法次第なので、確実に削減できるとは言えません。

以上の2つの落とし穴に対してのソリューションとしてひとついいアイデアがあります。導入するITシステムに、毎月どれほどコストが削減できたか、あるいはどれほど売り上げに貢献されたかをマネージメントレポートとして報告する機能をIT システム自体に持たせることです。

試用中であれば、そのシステムのROIが一目瞭然となり、導入の意思決定の指標にあります。正式導入後も、定期的なレポートはもとよりシステムを使用するたびに、どれほど改善さてたのかを数値で提示することができれば、ユーザーのモチベーションは何も提示しない場合よりかなり違うはずです。

たとえば承認ワークフローシステムを導入した場合、すべての承認を終えたとき、以前の導入前の平均時間よりどれほど短縮できたかどうかを、ユーザーや関係者にわかるようにすれば、ただ漫然とシステムを使用するより、システムを導入した改善目標の達成へのモチベーションは違ってくるはずです。そして成果が出ていない場合、何が原因なのかを分析して、次なる改善に向かうことができます。

よくあるのが、ワークフローシステムを使用しているが、申請時の単純なミスがワークフローの最後のほうで初めて判明し、再度申請をやり直すこととなり、また長いフローを初めからやり直すということが散見されます。もしこういった非効率なワークフロー処理が発生した場合、リアルタイムで表示したり、定期的なマネージメントレポートの中に最も非効率なワークフローワースト10としてつるし上げたりすれば、成果が出ないのはシステムの仕様やパフォーマンスに問題があるのか、それとも使用方法に問題があるのかがわかると同時に、改善点が明確となり、成果はどんどん確実性を増すようになります。

クレイトン・クリステンセン著作「ジョブ理論」では、「ビッグハイア」と「リトルハイア」という概念があります。システムを導入するのがビックハイアで、その後導入した目的を達成するのがリトルハイアです。

企業に導入システムには、このリトルハイヤの成果を自らが自動で検証できる機能が、今後のスタンダードになるものと私は予測します。

ITコンサルティングの要シミュレーション
トップへ戻る